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2026/07/23 12:25

米軍のベイカーパンツ(ファティーグパンツ)は、普段着・作業着として大量に支給された定番です。同じ見た目でも、内側のタグを読むと年代がかなり正確に分かります。手がかりは、生地の種類(OG-107/OG-507)・タグの色・契約番号・そしてNSN/FSNという在庫番号。この記事では、当店が扱ってきた実物のタグを拡大しながら、その一つひとつを“全部”解説します。

60sのOG-107ベイカーパンツ。コットンサテンの独特の光沢とワイドなシルエット。

まず結論 — 米軍パンツの年代を読む3つの軸

生地の切替=1975年。コットンサテンのOG-107から、綿ポリ混(NYCO)のOG-507へ。OG-507は内側に“黄色いタグ”が付くのが目印。

契約番号の頭。DSA=1962〜77年/DLA=77〜78年以降。番号中の2桁が契約会計年度。

在庫番号の桁数。11桁のFSNなら1974年以前、13桁のNSNなら1974年以降。生地の切替とほぼ重なります。

OG-107 と OG-507 — 生地の世代を実物で見る

OG-107(コットンサテン)。ボタンフライ・前面のパッチポケット。

OG-507(綿ポリ混NYCO)。シルエットは近いが、生地と黄色タグが違う。

いちばん大きな分かれ目が、生地です。OG-107はコットンサテン(綿100%)、OG-507は綿とポリを混ぜたNYCO系で、その切替が1975年。色みはよく似ていて写真では見分けづらいのですが、OG-507には内側に黄色いタグが付くので、これが最短の判別ポイントです。手に取ると、OG-107はやや起毛したサテンの光沢、OG-507はさらりとした化繊混の質感、という違いもあります。

契約番号とNSN/FSNを“読む” — 実物タグで徹底解説

ここからが本題。当店の実物タグを拡大して、番号の意味を一つずつ読み解きます。まずはOG-107(1971年)のタグから。

OG-107のタグ全文:「TROUSERS, MEN'S, COTTON SATEEN OG-107, TYPE I/DSA100-71-C-0984/36×31/8405-082-6615/G-8 MFRS. INC.」

契約番号「DSA100-71-C-0984」は、意味のかたまりに分解できます。頭のDSA=契約した機関(Defense Supply Agency)、100=装備の品目区分、71=契約が結ばれた会計年度(=おおよそ1971年)、C=契約の種別、0984=連番。機関名は時代順に QM(〜1953年頃)→ DA(1953〜62年)→ DSA(1962〜77年)DLA(1977/78〜93年)→ SPO/SPM(1994年〜)と変わります。

そして在庫番号「8405-082-6615」。これはFSN(Federal Stock Number)で、11桁です。頭の8405は品目分類コード(FSC)で“男性用アウター(被服)”を表します。このFSNは、1974年にNSN(13桁)へ切り替わりました。NSNは「FSC(4桁)+国コード(2桁)+品目番号(7桁)」の形で、米国の移行品には国コード「00」が入ります。

OG-507の黄色タグ全文:「TROUSERS, UTILITY, DURABLE PRESS, OG-507/DLA100-86-C-0544/50% POLYESTER 50% COTTON/COASTAL INDUSTRIES, INC.」

同じ一着の別タグ:「36×35/8405-00-610-2695」。これが13桁のNSN。頭8405=男性用アウター、続く00=国コード(1974年移行・米国)。

OG-507の番号は「DLA100-86-C-0544」=DLA・86年度(=おおよそ1986年)。在庫番号は「8405-00-610-2695」で、13桁のNSN。頭8405(男性用アウター)は同じですが、OG-107の11桁FSN → OG-507の13桁NSNという桁数の違いそのものが、1974年の切替=年代の証拠になります。生地の切替(1975年)とほぼ重なるのが面白いところです。

当店の実物スペック一覧(読み取れた全データ)

参考までに、当店で実際に読み取れた個体のスペックを並べます(隠さず全部出します)。

OG-107/1971年 — 契約 DSA100-71-C-0984/在庫番号 8405-082-6615(11桁FSN)/生地 コットンサテン(綿100%)/サイズ 36×31/製造 G-8 MFRS. INC./タグに「TYPE I」表記

OG-507/1986年 — 契約 DLA100-86-C-0544/在庫番号 8405-00-610-2695(13桁NSN)/生地 ポリ50%綿50%(NYCO)/サイズ 36×35/製造 COASTAL INDUSTRIES, INC./黄色タグ

OG-507/1983年 — 契約 DLA100-83-C-0328/生地 NYCO/サイズ 34×31/製造 GLENN BERRY MFG. INC./黄色タグ

1983年契約(DLA100-83-C-0328)のOG-507。製造はGLENN BERRY MFG.。契約番号は個体ごとに違い、製造メーカーもさまざま。

ポケット・フラップと“Type”表記 — 正直な話

OG-107の腰まわり。ボタンフライ・ベルトループ・後ろのパッチポケット。

OG-507の腰まわり。基本の作りは共通。フラップの形は個体で少しずつ違う。

尻ポケットのフラップ(先端が尖ったタイプ)。

こちらは角の丸い(面取り)フラップ。

収集家の間では、尻ポケットのフラップ形状で“Type I・II・III”と呼び分ける整理もあります。ただし、その形と製造年の対応は資料によって幅があり、単独の決め手にはなりません。実際、当店の1971年契約(DSA100-71)の個体にも、タグには「TYPE I」の表記が残っていました。当店では、こうした呼称は参考にとどめ、年代は契約ラベルと生地・在庫番号を根拠に判断します。

フィールドパンツ — カーゴ付きの“野戦用”

M-51フィールドパンツ。太もものカーゴポケット、ウエストの調整タブ、裾のドローコード。

側面の大型カーゴポケット。ベイカーパンツには無い、野戦用の実用装備。

ベイカーパンツ(OG-107/507)とは別系統なのが、フィールドパンツ(フィールドトラウザー)です。太もものカーゴポケット・ウエスト調整タブ・裾のドローコードが特徴で、フィールドジャケット(M-51/M-65)とペアで使われました。これも内側に契約ラベルが付き、年代はDSA/DLAで読みます。M-51とM-65のフィールドパンツはよく似ていて、後期M-51と初期M-65はほとんど地続きです。

※M-65表記のフィールドパンツ(後継型)は、現在当店の在庫にありません。入荷したら、契約ラベルの実物写真とともにこの記事に追記します。手元に無い写真を、他の型のパンツで代用することはしません。

タグの無い一着は「不明」と書きます

星型エンボスの金属ボタン・非対称のポケットなど古い特徴を持つが、タグが無く年代を確定できなかった一着。

米軍パンツは、洗濯や経年でタグが失われた個体も少なくありません。この一着は古い時代の特徴が見られますが、年代を裏づけるタグが無いため、当店では「詳細不明(推定40〜60s)」と正直に書きます。実物の判断材料としては、契約番号やNSNの印字・重い生地は実物寄り、大きなブランドタグや洗濯絵表示・RN番号は民生/リプロ寄りの弱い手がかり(あるときのみ)です。

買う前にチェックすること(まとめ)

米軍パンツを選ぶときのポイントを4つ。①黄色タグの有無でOG-107(〜75年)かOG-507(75年〜)かを見る。②契約ラベルの頭(DSA/DLA)と在庫番号の桁数(FSN11桁/NSN13桁)で年代帯を確認する。③カーゴポケットの有無でベイカーかフィールドパンツかを分ける。④サイズは米軍規格なので、ウエスト・股上・股下・わたりを必ず実寸で確認する。

サイズ規格の読み方

米軍パンツのサイズはウエスト×股下のインチ表記(例 36×31)が基本ですが、実際の寸法は個体差・洗濯による縮みがあります。タグの数字だけで判断せず、実寸で確認するのが確実です。当店ではウエスト・股上・股下・わたりを実際に採寸して掲載しています。

当店の表記方針

複数の手がかりを組み合わせても、古着の製造年を1年単位で断定することはできません。当店では、確認できた契約ラベル(DSA/DLA)・在庫番号(FSN/NSN)・生地(OG-107/OG-507)・ディテールを根拠として商品説明に記し、判読できない部分は「不明」と正直に書きます。年代も「60s」「70s」のように10年単位の目安にとどめます。

販売中の米軍パンツ・ミリタリーはこちら: Militaryの出品一覧