2026/07/17 22:21

M-65フィッシュテールパーカー(モッズコート)。当店で扱ってきた中でも状態のよい一着で、現在販売中です(記事末にリンク)。
古着屋がなぜ複数の国で買い付けるのか、と聞かれることがあります。当店ib2の答えは単純で、国ごとに流れている古着の種類と量が違うからです。当店の買付先はパキスタンとタイの二カ国。それぞれが何を担っているのかを、事実の範囲で説明します。
■ まず結論
パキスタンは量の経路です。コンテナ単位でまとまった数が入る代わりに、中身は開けるまで選べません。
タイは精度の経路です。市場や卸で一点ずつ手に取って選べる代わりに、量はまとまりません。
性格の違う二つを組み合わせて、当店が扱うカテゴリの幅を確保しています。冒険をしに行っているわけではなく、品揃えのための仕入れの設計です。
パキスタン — アメリカ古着が大量に流れ込む経路
古着の国際流通では、アメリカが世界最大級の輸出国とされ、パキスタンは重量ベースで世界有数の輸入国の一つに数えられます。つまり、アメリカから輸出された古着が大量に集まるルートの一つがパキスタンです。当店はここで、輸入業者からコンテナ単位でロットを仕入れています。
荷は大きな袋(ベール)に詰められたまま届きます。20フィートコンテナ一本に数千点単位が入り、ミリタリーやワークウェア系の比率が高い傾向があります。まとまった量と、ワーク・ミリタリーの厚み。この経路が担っているのは、その二つです。

米軍のOG-107ベイカーパンツ。コットンサテンの光沢とワイドなシルエット。こうした米軍の実用衣料は、コンテナのロットに比較的よく入る系統です。

同じ一本のタグ。「TROUSERS, MEN'S, COTTON SATEEN OG-107, TYPE I/DSA100-71-C-0984/36×31/8405-082-6615/G-8 MFRS. INC.」。契約番号の中の「71」が契約年度にあたります。
量が入るということは、当たりも外れも一緒に入るということでもあります。どの型が何点入っているかは、開封して数えるまでわかりません。だから当店では、届いた荷を一点ずつ広げて確認する時間を、最初から作業として見込んでいます。

M-65フィールドジャケット。スタンドカラー、前立てのジップ+スナップ、四つのポケット。米軍の定番アウターも、こうしたロットで出会う系統の一つです。
タイ — 集積地で、手に取って選ぶ
タイは東南アジアの古着流通の集積地の一つとして知られます。パキスタンのコンテナ買付とは性格がまるで違い、現地の市場や卸から小ロットで、実際に手に取りながら選びます。
様々な年代・ジャンルが混在するなかから、一点ずつ状態を見極められるのがこの経路の強みです。コンテナでは狙って拾えない種類を、選んで補える。その代わり、ここで数百点をまとめて確保することはできません。

色落ちの進んだフレンチワークのジャケット。襟はコーデュロイ。ポケットまわりに補修の跡があります。首元に刺繍タグが付きますが崩し字で判読が難しく、当店ではブランドを断定していません。こうした一点は、現物を手に取って作りと状態を見るしかありません。
買付現場の写真は、この記事にはまだありません。次回の買付のときに撮影して追加します。無い写真を、別のもので代用することはしません。
二つの経路が、互いの弱点を埋める
一つの経路だけに頼ると、品揃えがその経路の性格にそのまま偏ります。コンテナはまとまった量が入る代わりに中身を事前に選べない。タイは選べる代わりに量が出ない。弱点の出方が逆なので、二つを重ねると穴が埋まります。
量のパキスタンと、精度のタイ。当店が扱うカテゴリの幅は、この二つの重ね方で決まります。どちらか片方だけでは、いまの品揃えにはなりません。
正直な注記 — 開けるまでは、わからない
ロット買いである以上、届くまで中身は確定しません。これは仕入れの前提であって、隠すことでもありません。だからこそ、届いてからの作業に時間を使います。
・一点ずつ広げて、汚れ・破れ・補修の跡を確認する
・着丈・身幅・肩幅・袖丈などをcmで測る
・タグが読めるものは記載を書き写し、読めないものは「不明」と書く

読めたタグの例。「PARKA, EXTREME COLD WEATHER/DSA100-74-C-0168/VANDERBILT SHIRT CO., INC./MEDIUM-REGULAR/CHEST: FROM 37 TO 41 INCHES」。頭のDSAと、番号中の「74」が年代の手がかりになります。

読めなかったタグの例。品名の「COAT, COLD WEATHER, MAN'S FIELD」はかろうじて追えますが、契約番号は判読できません。この場合、年代は断定せずに「不明」と書きます。
同じ型でも、契約ラベルが読める個体と読めない個体があります。読めた分だけを根拠として書き、足りない分は足りないまま出す。ロットで仕入れる以上、これが現実的なやり方だと考えています。
買付地は、盛らずに書く
仕入れ地は、その一点がどの流通経路を通ってきたかを示す事実です。当店はこれを「遠い国から取り寄せた特別な一点」という物語に仕立てることはしません。事実は、事実の大きさのまま書きます。
どこで買ったかは、必要な範囲でそのまま記します。それよりも、一点ごとの実寸と状態、タグから読み取れた根拠を丁寧に書くことに時間を使います。パキスタンとタイという二つの経路は、そのための裏側の仕組みです。
■ 販売中の関連商品・関連記事
届いた荷が一点ずつ商品になるまでの記録は、こちらの記事に書いています:
写真はすべて当店で撮影した当店の在庫です。個体の写真は在庫の実例であり、その一点がどの経路で入ってきたかを示すものではありません。
買付現場の写真は、次回の買付時に撮影して追加します。
本記事は2026年7月に全面更新しました。以前の記載に含まれていた国内での買付は、現在の買付体制と異なるため削除しました。当店の買付先はパキスタンとタイの二カ国です。
日々の考えはnoteにも書いています: https://note.com/ib2
