2026/09/08 01:02

UNION MADE のタグは、組合員が作ったことを示す表示で、アメリカ製の証明ではありません。組合名の略号を読むと年代の枠が出ます。当店の実物写真とあわせて、どこまで言えてどこから言えないのかを整理しました。
写真:【W43 L27】40s フレンチワーク Metis インディゴ パンツ。この1本には組合ラベルがありません。なぜ「無い」ことから何も言えないのかを、後半で書きます。
まず結論 — UNION MADE は「誰が作ったか」の表示
UNION MADE のラベルは、アメリカの労働組合が、組合員のいる工場で作られたことを示すために衣類に付けたものです。連合体として推進したのは AFL-CIO の Union Label and Service Trades Department で、1909年に設けられた部門です。
同じ部門の公式の説明では、このラベルが示すのは作った人が組合員であり、公正に扱われていることであって、原産国の証明ではありません。ここが、古着の現場でいちばん取り違えられている点です。UNION MADE と書いてあっても、それは「アメリカで縫われた」とは言っていません。
そのうえで、このラベルには古着にとって使い道があります。組合の名前が読めれば、その組合が存在した期間から年代の枠が出ます。組合は合併し、名前を変え、消えます。その日付は労働史の側にきちんと残っているので、読めた略号がそのまま年の手がかりになります。
組合名の略号を読む — 略号ごとに出る年の枠
ラベルにある略号ごとに、言えることが変わります。当店が拠り所にしている枠は、次のとおりです。
ILGWU(International Ladies' Garment Workers' Union・1900年6月3日結成)。婦人服の組合です。1995年に ACTWU と合併して UNITE になったので、1995年以前という上限が出ます。
UNITED GARMENT WORKERS / U.G.W. of A.(United Garment Workers of America・1891年結成)。紳士服とワークウェアの側です。1994年に UFCW へ統合され、1994年以前という上限が出ます。
ACWA / AMALGAMATED CLOTHING WORKERS(Amalgamated Clothing Workers of America・1914年結成)。紳士服です。1976年に TWUA と合併して ACTWU になったので、1976年以前。
ACTWU(Amalgamated Clothing & Textile Workers Union)。ここは珍しく両側が埋まります。1976年に生まれ、1995年に UNITE になったので、1976年以降かつ1995年以前。
UNITE は1995年以降、UNITE HERE は2004年以降、Workers United(2009年3月に UNITE HERE から分かれた SEIU 系)は2009年以降。ここから先は、下限しか出ません。
もうひとつ、略号とは別に効く行があります。ラベルの中の AFL-CIO の文字です。AFL と CIO が合併したのが1955年12月5日なので、この文字が読めれば1955年以降と言えます。
逆に言うと、略号を読まずに「ユニオンタグ」と一括りにすると、何も絞れません。ILGWU は名前のとおり婦人服(Ladies')の組合で、紳士服やワークウェアは UGWA・ACWA の系統です。読めた略号で、分野も年の枠も変わります。
ILGWU のラベルには年表がある
ILGWU のラベルだけは、意匠の変更が年表として残っています。資料の保管先は、コーネル大学 ILR 校の Kheel Center です。
1936年、ILGWU が Union Label Office を設置。当時ラベルを使っていたのは32社でした。1955年、AFL と CIO の合併がラベルの文言に反映されます。1958年に Union Label Department が置かれ、基本形は約1 1/4 × 7/8インチの、小さな青い印刷布でした。1959年1月9日、新しいラベルの発行が始まり、ドゥビンスキー会長が使用を義務づけます。1963年、union made の語を強調するデザイン変更。1974年、色が赤・白・青になり、Made in the U.S.A. の行が加わりました。1985年、その表示が必須になります。そして1995年、ACTWU と合併して UNITE へ。
実務でいちばん効くのは、この組み合わせです。ILGWU のラベルで、赤白青で、Made in the U.S.A. の行がある。これが読めたときだけ、1974年以降かつ1995年以前と、上と下の両方が埋まります。古着では珍しいことです。年代の手がかりのほとんどは、片側しか出ません。
逆向きには使えない — 「無い=新しい」は言えない
ここからが、この記事の芯です。上の年表は、読めたときにだけ使えます。裏返して使うと、外します。
「Made in the U.S.A. の行が無いから1974年より前」とは言えません。ILGWU 以外の組合のラベルは様式が別で、そもそもその行を持ちません。ILGWU のラベルだと読めた場合に限って、「1974年より前の可能性が高い」まで、です。
「組合ラベルが無いから組合外、あるいは新しい」とも言えません。縫い付けのラベルも、糊付きのラベルも、ハングタグも、落ちますし、切られます。当店では、ボタン・吊りバンド・裾の締め紐・内側のインクスタンプ・縫い付けラベル・紙タグ・ジッパーを、欠落と交換が起きる部品として扱っていて、「無い」ことからは何も読みません。
旧名称のラベルがあるから合併年より前、というのも厳密ではありません。印刷済みのラベルは、在庫が尽きるまで使われるからです。当店はここを「〜より後ではない可能性が高い」に留めています。省庁名や工場の閉鎖年から年代を導くときと、同じ作法です。

写真:【W43 L27】40s フレンチワーク Metis インディゴ パンツより。ラベルが残っていない個体では、生地・仕立て・留め具といった写真で見える事実だけを書きます。
よくある4つの誤解
当店が「書かない」と決めている言い方を、理由とあわせて並べます。
1. 「UNION MADE=アメリカ製の保証」。成り立ちません。ILGWU のラベルに Made in the U.S.A. の行が入ったのは1974年、必須になったのは1985年です。それ以前の Union Made ラベルは、原産国について何も言っていません。加えて、後継の Workers United は現在もアメリカとカナダの組合員を代表しています。組合ラベルは、国籍のラベルではありません。
2. 「UNION MADE タグ=1950〜60年代のヴィンテージ」。成り立ちません。UGWA のラベルは1994年まで、ILGWU は1995年まで使われ、後継の UNITE・UNITE HERE・Workers United は今も存続しています。上限が出ません。
3. 「ユニオンタグ」でひとまとめにする。これが実害の大きい癖です。略号を読まずに年代を出すと、婦人服の組合のラベルを紳士服の年表で読む、という取り違えが起きます。
4. 「UNION MADE=品質の等級」。労使関係の表示であって、生地や縫製の等級ではありません。同じ組合のラベルが付いた服の中にも、良い縫製とそうでない縫製があります。
フランスのワークウェアの「UNION」は、労組ラベルではない
ここは当店の在庫と直結する話です。フレンチワークの刺繍タグやプリントには、UNION という語が入っているものがあります。これを見て「ユニオンタグだ」と読むのは、間違いのもとです。
フランス語で労働組合は syndicat です。UNION の語だけでは、労組ラベルとは判定できません。当店は、組合名・略号・AFL-CIO の文字のいずれかが読めないかぎり、労組ラベルとは呼びません。これは、アメリカの制度に紐づいた話を、そのままヨーロッパの服へ持ち込まないための線引きです。
そして、当店のフレンチワークの多くは、そもそもタグが残っていません。

写真:【W28 L25】30-40s ファーマーズ コットンピケ ブラック ストライプパンツ。当店の商品説明でも「タグ:なし」としている個体です。

写真:同じ個体より。読める文字が無いので、当店は30-40s という10年単位の幅で出しています。単年は出しません。

写真:同じ個体より。厚手のコットンピケです。生地の質感は年代の話し相手にはなりますが、それだけで年を決める材料にはなりません。
もう1本、ラベルの無いファーマーズを並べます。

写真:【W33 L30】40-50s ファーマーズ ストライプ ブラック。この個体も、当店の商品説明で「タグ:なし」としています。

写真:同じ個体より。ウエストのシンチは当店の説明にも書いていますが、フランスのワークウェアのシンチは戦後も続きます。シンチがあることは、戦前の証拠にはなりません。

写真:同じ個体より。前立てのボタンは、材質から年代を出す材料にはしていません。非破壊で材質を確定する方法が無く、交換されている可能性も残るからです。
では、生産国はどこで読むのか
UNION MADE が原産国を語らないなら、原産国は何で読むのか。答えは単純で、MADE IN の行をそのまま読むことです。
読めた MADE IN は、ブランドによっては年代の上限にもなります。たとえばリーバイスの MADE IN USA は、最後の自社工場だったサンアントニオが2003年末に閉じているので、おおむね2003年以前と読めます。同じように、Levi's の MADE IN BELGIUM / FRANCE はおおむね1999年以前、MADE IN UK はおおむね2002年以前です。工場が閉じた年は、上限としてだけ使えます。
ついでに、こちらもよく見る誤解なので書いておきます。「USA製が本物で、それ以外は格下やライセンス品」ではありません。リーバイスは欧州に自社工場を持っていましたし、契約工場も公開のリストに載る正規の生産です。UNION MADE を「アメリカ製の格付け」として読む癖は、この誤解と同じ根から出ています。

写真:【W29 L30】70s-80s USA製 Lee コーデュロイパンツ キャメル。当店が「USA製」と書いているのは、組合ラベルからではなく、生産国の表記を読んだ結果です。
組合ラベルの写真は、この記事にありません
正直に書きます。この記事に載せた当店の個体には、組合ラベルが付いていません。だから、UNION MADE のラベルそのものの写真は1枚もありません。よその写真を借りて代わりにすることも、似た別のタグを「組合ラベル」と説明することもしません。当店の記事に載る写真は、当店で撮った当店の個体だけです。
読める個体が入荷したら、この記事に写真を足します。そのときは、略号・色・Made in the U.S.A. の行の有無まで、読めた文字をそのまま転記します。
あわせて、まだ分かっていないことも書いておきます。ACWA と UGWA のラベル意匠が年ごとにどう変わったのかは、一次資料に届いていません。「1933年に全製品へ導入」「1962年に ® を追加」といった説は見かけますが、収集家のサイトやフォーラムにしか無いので、当店は使いません。AFL 単独・CIO 単独の表記がいつまで流通したかも未確認です。だから「AFL 単独=1955年以前」とは書きません。
当店が年代を書くときの決まり
手がかりには、以降・以前・絞れない の3つの向きがあります。当店は、上と下の両方が埋まったときだけ年代の帯を出します。片側しか出ないときは「◯年以降(上限は不明)」の形で書きます。読めなければ「不明」と書きます。埋めません。
年代は10年単位です。単年を出すのは、その個体に日付そのものが読めたときだけです。
サイズについても、同じ考え方です。表記の体系は国ごとに別で、混ぜると外します。最後に信じるのは平置きの実寸だけなので、商品ページの採寸をご確認ください。

写真:【W43 L27】40s フレンチワーク Metis インディゴ パンツより。Métis は綿と麻の交織を指すフランス語の生地名で、軍の型式名ではありません。
買う前に見るところ
UNION MADE のラベルが付いた1本を前にしたとき、順番はこうです。
1つ目、組合の略号を読む。ILGWU なのか、UGWA なのか、ACWA なのか、ACTWU なのか。ここで分野と年の枠が決まります。2つ目、AFL-CIO の文字を探す。あれば1955年以降。3つ目、Made in the U.S.A. の行を見る。ILGWU で赤白青なら、あれば1974年以降。無いことからは何も読みません。4つ目、MADE IN の行を別に読む。原産国はそこにしか書いていません。5つ目、実寸を見る。ここは古着では最後の共通言語です。
この5つで出るのは、たいてい「◯年以降」か「◯年以前」の片側だけです。それでいい、というのが当店の立場です。片側しか出ていないものを帯に見せかけるほうが、よほど困ります。

写真:【W37 L29】70s- YVES SAINT LAUREN TEOLAIRジッパー ストライプ。この個体も「タグ:なし」で、当店は「70s-」と下限だけで出しています。上限は書いていません。

写真:同じ個体より。ジッパーは交換される部品なので、年代の決め手にはしていません。
この記事で触れた当店の個体
この記事に写真を出した個体です。40s フレンチワーク Metis インディゴ パンツ(W43 L27)、30-40s ファーマーズ コットンピケ ブラック ストライプパンツ(W28 L25)、40-50s ファーマーズ ストライプ ブラック(W33 L30)、70s- YVES SAINT LAUREN TEOLAIRジッパー ストライプ(W37 L29)。
同じ系統をまとめてご覧になるなら、FRENCH WORK のカテゴリと、1970-80s のカテゴリからどうぞ。
タグの読み方の続きは、こちらに書いています。Lee/Wranglerの見分け方、洗濯タグ(ケアラベル)で古着の年代を読む、フレンチワークの見分け方・完全ガイド。
写真はすべて当店の実物を当店で撮影したものです。組合と年表の事実は、AFL-CIO の Union Label and Service Trades Department、コーネル大学 ILR 校 Kheel Center の ILGWU 年表、および当該労組の公式沿革によります。読めた文字だけを書き、読めないものは不明としています。在庫の状況により、掲載した個体が売り切れている場合があります。
