2026/10/28 19:51
フレンチワークパンツの年代は、シンチやボタンフライでは分けられません。言えるのはタグの文字だけで、どれも「◯年以降」の片側です。当店には2026年10月28日時点で133本あり、ウエスト・股上・股下・わたり幅・裾幅の実寸で選べます。
文と写真 ib2(青森の古着店) / 2026年10月28日の在庫をもとに作成

30-40s のフレンチワークパンツの全体。ウエスト43cm・股下68cm(平置き)。
まず結論 — 年代はタグの「以降」だけ、選ぶのは実寸で
① シンチ・ボタンフライ・サスペンダーボタンは今の新品にもあり、年代の根拠になりません。言えるのはタグの文字から「◯年以降」の側だけです。
② モールスキン・コーデュロイ・Metis などの生地や、黒・茶・青の色からも、年代は分けられません。
③ サイズは表記ではなく、手持ちのズボンと、ウエスト・股上・股下・わたり幅・裾幅の実寸を比べて決めてください。
この記事は、フレンチワークパンツ(フランスの作業着のズボン)を探している方に向けて書きました。上着の年代の読み方は60s フレンチワークジャケットの選び方に、フレンチワーク全体の見分け方はフレンチワークの見分け方・完全ガイドにまとめています。ここではズボンにしかない作りと生地、そして実寸の読み方を、当店の実物で確かめます。
先に、当店の年代の書き方の約束です。年代の手がかりは、どれも片側にしか使えません。「洗濯記号があれば1963年以降」は言えますが、「洗濯記号が無いから1963年より前」は言えません。タグは洗濯で消え、切られ、作業着にはもともと付いていないこともあるからです。だから商品名の年代は、10年単位の目安として書いています。
① 背中のシンチ(尾錠) — 戦前とも、何年代とも言えない

30-40s のフレンチワークパンツの背中。左右のベルトを針の付いた尾錠で留めるシンチ。

Adolphe Lafont のモールスキンパンツの背中。こちらも針の尾錠。

黒いウールのフレンチワークパンツのシンチ。針の無い四角い金具。
腰の後ろでウエストを絞るベルトを、シンチ(シンチバック・尾錠)と呼びます。フレンチワークパンツでいちばん目に付く作りで、商品ページで「針式シンチ」と書くのは、上の2本のように金具に針があるものです。3本目のように、針の無い金具の個体もあります。
針式のシンチが付いていれば戦前、という話はよく見かけます。けれどもこれはアメリカのデニムの話で、そちらは戦時の規制で1942年頃に消えたとされます。フランスの作業着のシンチは戦後も続きました。しかも、今フランスで作られている新品のワークパンツ(当店の資料にある例は550g/m²の生地で€179)にも、シンチ・サスペンダーボタン・ベルト通しの無い腰回りが全部そろっています。だからシンチがあるから古いとは言えませんし、シンチの形から年代を分けることもできません。
リーバイスのシンチも同じで、戦時中に消えたあと、復刻の新品に付いています。当店で扱ったリーバイスには、タグに型名の「CINCHBACK」と「MADE IN PHILIPPINES」が刷られた個体がありました。
② ボタンフライとサスペンダーボタン — 作りで年代は分けられない

30-40s のフレンチワークパンツの前を開けたところ。ボタンで閉じる前開きと、腰のフック。
前をボタンで閉じる作り(ボタンフライ)と、腰の外側に並ぶサスペンダー用のボタンも、フレンチワークパンツによくある作りです。けれども、どちらも年代の根拠にはなりません。
前開きがボタンかジッパーかだけで年代を決めることは、当店の資料では使ってはいけない見方にしています。サスペンダーボタンも、①に書いたとおり今の新品に付いていて、復刻でも作られる意匠です。ベルト通しが無いことも、今の新品にある作りなので、古さの印にはなりません。
ボタンそのものも同じです。金属・コロゾ・樹脂といったボタンの素材は、壊さずに確かめる方法が無く、付け替えられていることもあります。当店の実物にも、同じ前立てに色の違うボタンが混ざった個体がありました。ボタンの刻印も、ブランド名とは限りません。当店の実物には「★ELEGANT ★SOLIDE」のような品質の宣伝文句や、金具のメーカーの名前(ZEUS・SHIELD)がありました。「Breveté S.G.D.G.」の刻印は、フランス製なら1968年以前の可能性が高い、という片側の手がかりになりますが、ボタンは付け替えられる部品なので、ズボン全体の年代とはしません。サスペンダーの吊りバンドや裾の紐も、外れているのが普通で、無いことは何の証明にもなりません。
③ 生地 — モールスキン・コーデュロイ・Metis・ピケ・ウールで年代は出ない

Adolphe Lafont のモールスキンパンツ。ウエスト42.5cm・股下70cm。

Le Chamonix のコーデュロイパンツ。ウエスト48cm・股下67cm。

Le Sanglier のフレンチワークパンツ。商品名の生地はコットンピケ。ウエスト40cm・股下63cm。
フレンチワークパンツの生地は、当店の在庫133本の商品名で数えると、コットン37本、モールスキン28本、コーデュロイ21本、Metis 9本、ウール7本、ピケ2本でした(名前に生地が書いていない品もあります)。どの生地にも、年代を分ける根拠は当店の資料にありません。生地は、穿き心地と季節の好みで選んでください。
モールスキンは、フランスのワークウェアでは青い作業着(ブルー・ド・トラヴァイユ)によく使われた生地で、これは民間の作業着です。生地の名前だけで、フランス軍の放出品とは言えません。軍のものかどうかは、形とポケットの配置、タグで見ます。VETRA の公式の沿革によれば、同社は金糸のロゴをモールスキンなど上位の商品に付けていました。ロゴの金糸は等級の印で、年代の印ではありません。
コーデュロイは、畝の太さで年代を分けられません。畝の太さは用途と流行で決まり、太いものも細いものも長く並んで作られてきました。当店には、本体と補修の当て布で畝の太さが違う個体もあります。「王様の畝」から来た名前だという話も、フランス語に記録がありません。フランス語では velours côtelé と呼びます。
Metis(メチス)は、綿と麻を交ぜて織った生地のフランス語の名前で、軍の型式の名前ではありません。ヘリンボーン(HBT)も織り方の名前で、ミリタリーだけのものではなく、民間の作業着にも使われます。組成表示に「TERGAL」(フランスのポリエステルの商標)があれば1954年以降と言えますが、上限は出ません。ピケとウールについても、生地から年代を出す根拠は当店の資料にありません。
④ 黒いモールスキンのパンツ — 色からは年代も国も決まらない

黒いモールスキンのパンツ。ウエスト41cm・股下68cm。

腰裏の刺繍タグ「ALMI」「Die gute Qualität」。
「ブラックモールスキン」で探す方が多いので、黒い個体を1本取り上げます。当店で商品名に「ブラック」と「モールスキン」の両方が入ったフレンチワークパンツは、2026年10月28日時点で2本と少数です。黒いズボン全体では21本あり、多くはコーデュロイやウール、ストライプの生地でした。
黒という色からは、年代は分けられません。当店の資料に、色で年代を分ける根拠が無いからです。上の1本の腰裏のタグはドイツ語で「Die gute Qualität」(よい品質)と読めます。どこの国で作られたかは、このタグだけでは言えません。黒いモールスキンには、ドイツ軍のズボンもあります。当店の在庫にも、商品名に「ドイツ軍 実物」と入ったモールスキンのズボンがあります。軍のものかどうかも、生地ではなく、形とタグで見ます。
⑤ タグ — 言えるのは「◯年以降」の側だけ

Adolphe Lafont のモールスキンパンツの腰裏。「ADOLPHE LAFONT / LYON / MARQUE DÉPOSÉE」。

J.BEAULIEU のコーデュロイパンツの腰裏。「…ÊTEMENTS DE TRAVAIL / J.BEAULIEU / St JUST S/ LOIRE」(左端は隠れて読めません)。

Le Chamonix のコーデュロイパンツの腰裏。「Le Chamonix / MARQUE DÉPOSÉE」。
ズボンでも、年代の根拠になるのはタグの文字です。読み方は上着と同じなので、詳しくは60s フレンチワークジャケットの選び方に譲り、ここではズボンの3枚のタグで何が言えるかだけを見ます。
1枚目の Adolphe Lafont は、公式の沿革によれば、この名前を登録して見て分かるラベルを作ったのが1896年です。だから言えるのは「1896年以降」で、今のズボンを選ぶ手がかりとしては弱いものです。タグに「1844」とあれば、それは創業の年で、作った年ではありません。ブランドについてはAdolphe Lafont(アドルフ・ラフォン)のタグと年代にまとめています。
3枚とも「MARQUE DÉPOSÉE」(登録商標)の文字がありますが、これは1857年からの商標法の時代にも、1965年に施行された新しい法律の時代にも、今も普通に書かれるので、年代の手がかりになりません。2枚目の J.BEAULIEU には町の名前「St JUST S/ LOIRE」がありますが、郵便番号はありません。町名の前に5桁の郵便番号があれば1972年6月以降と言えますが、番号が無いことは古い証拠になりません。多くのタグは、もともと住所も電話も持たないからです。
ほかに、洗濯記号があれば1963年以降、Le Laboureur のタグなら1956年以降、のような手がかりがあります。どれも片側だけです。ブランドごとのタグはフレンチワークのブランド図鑑で読めます。
⑥ 実寸の読み方 — ウエスト・股上・股下・わたり幅・裾幅

黒いウールのフレンチワークパンツ。ウエスト43cm・股上32cm・股下72cm。
当店は、ズボンを平らに置いて測った実寸を、商品ページの「Size」欄に書いています。項目は次のとおりです。
ウエスト … 腰の端から端までの幅。平置きなので、2倍すると胴回りの目安になります。
股上 … 股の縫い目の交わる所から、ウエストの上の端まで。
股下 … 股の縫い目の交わる所から、裾まで。
わたり幅 … 股のすぐ下の、太ももの幅。
裾幅 … 裾の幅。
総丈 … ウエストの上の端から裾まで。
この記事に写真を載せた7本でも、ウエストは38〜48cm、股上は27〜33cm、股下は63〜75cm、わたり幅は26〜32cm、裾幅は20〜26cmと幅がありました。同じ「フレンチワークパンツ」でも、寸法は1本ずつ違います。
いちばん確かな選び方は、手持ちのズボンで、ちょうどよいと思う1本を平らに置いて、同じ項目を測ることです。その数字を商品ページの実寸と比べます。サスペンダーボタンがあっても、ベルト通しの付いた個体もあります(④の黒いモールスキンの1本など)。股上の深さと、わたり幅は、穿いたときの形を大きく変えるので、ウエストと股下の次に見てください。一部の商品ページには、平置きの実寸から機械的に出したサイズ感の目安も載せています。
⑦ 表記サイズ — 数字は実寸ではない、フランス軍の2桁は1950年以降

Le Sanglier のフレンチワークパンツの腰の内側。白い小さなタグに「44」。
タグに数字のサイズがあっても、実寸の代わりにはなりません。上の1本は表記が「44」ですが、平置きの実寸はウエスト40cmです。表記から実寸を出すことは、当店ではしていません。
フランス軍のズボンには、数字だけの2桁のサイズがあります。十の位が身長(長さ)の区分、一の位が胴回りの区分で、この2桁の形は1950年の軍の改革で入りました。だから2桁のコードが読めれば1950年以降と言えます。ただし、これは着る人の体の寸法の目安で、服の実寸ではありません。当店の実測でも、同じ「17」で3インチ違う個体が同時に在庫したことがあります。上着では一の位の意味が違うので、上下を同じ表で読まないでください。「92C」のように数字と英字の表記は、それだけでは年代が決まりません。
フランス軍のズボンの型の名前、たとえば M-47 の「47」は、制式の年であって、作った年ではありません。前のボタンの数から年代を決めることも、ボタンが取れたり付け替えられたりした個体と見分けられないので、当店ではしていません。
⑧ 裾と補修の跡 — 状態欄と写真で見る、補修から年代は出ない

30-40s のフレンチワークパンツの膝。糸で細かく繕った跡。

J.BEAULIEU のコーデュロイパンツの膝。こちらも糸で繕った跡。

黒いモールスキンのパンツの後ろ。四角い当て布。
この記事の7本でも、ほつれや補修の跡は、膝・股・裾に出ている個体が多くありました。当店では、ほつれ・汚れ・穴・リペア跡を、商品ページの「Condition」欄に場所ごとに書き、写真も載せています。裾のほつれや、裾上げの跡があるかも、ここと裾の写真で見てください。股下の実寸は、いまの裾の長さで測った数字です。
補修の跡や当て布から、年代は言えません。当て布は本体と別の布で、本体と畝の太さが違う個体もあります。ポケットの蓋だけ別の布に替えられた服もありました。補修は「どう穿かれてきたか」の跡として見て、年代の根拠にはしません。
⑨ 商品名の読み方 — 年代は10年単位の目安
2026年10月28日時点で、当店の商品名に「フレンチワーク」が入ったパンツの在庫は133本でした。商品名の年代で分けると、30年代以前を含む表記が24本、40年代(40s・40-50s)が21本、50年代(50s・50-60s)が50本、60年代(60s・60-70s)が27本、70年代以降が10本、表記なしが1本です。値段は5,000円から52,000円まででした。
この年代は10年単位の目安で、幅で書いてある品は、どちらかに決めきれない個体です。商品ページの説明に、シンチやボタンを理由にした年代の書き方が残っている品がありますが、①②に書いたとおり、当店の資料では作りは年代の根拠になりません。見た目の説明として読んでください。年代の根拠は、タグに読めた文字です。
商品ページを見るときは、次の順がおすすめです。まずウエスト・股上・股下・わたり幅・裾幅の実寸。次に Condition 欄と写真で傷みと補修の跡。最後に、タグの写真と年代の表記です。どれも一点物で、同じものは二つとありません。いま買える品はこの記事のいちばん下に、ほかの在庫はFRENCH WORK カテゴリにあります。
よくある質問
Q. 針式のシンチが付いたフレンチワークパンツは戦前のものですか?
A. そうとは言えません。フランスの作業着のシンチは戦後も続き、今フランスで作られている新品にも付いています。年代の根拠は、タグに読めた文字です。
Q. 黒いモールスキンのパンツは古いものですか?
A. 色からは年代は分けられません。モールスキンという生地の名前だけで、フランス軍のものとも言えません。形とタグで見ます。
Q. サイズはどう選べばいいですか?
A. 手持ちのズボンを平らに置いてウエスト・股上・股下・わたり幅・裾幅を測り、商品ページの実寸と比べてください。タグの数字は実寸ではありません。
Q. 補修の跡がある個体は、年代が古いのですか?
A. 補修の跡や当て布から、年代は言えません。どう穿かれてきたかの跡として、Condition 欄と写真で見てください。
あわせて読む
・60s フレンチワークジャケットの選び方
・フレンチワークの見分け方・完全ガイド
・フレンチワークのブランド図鑑
・Adolphe Lafont(アドルフ・ラフォン)のタグと年代
・SANFORタグで年代は読めるか
写真はすべて当店の撮影です。年代の手がかりは、当店がフランスの制度(法令・政令)と各社の公式の沿革で確かめたものだけを使い、確かめられていないものは書いていません。
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フレンチワークのパンツです。(2026年10月の更新時点で販売中の一点物です。売り切れの際はご容赦ください)
・30-40s フレンチワーク Metis リネンパンツ 針式シンチ W34
・30-40s Adolphe Lafont アドルフラフォン モールスキン ブラウン パンツW33
・40-50s 針式シンチ フレンチワーク Metis インディゴ パンツ W31
・20-30s フレンチワーク モールスキン ブラウン ワークパンツ W35
・50s 襤褸 パッチワーク フレンチワーク 太畝コーデュロイ パンツ W30
・40-50s フレンチワーク メタルボタン コーデュロイ ブラック パンツW38
・40-50s フレンチワーク 細畝コーデュロイ ブラック パンツ W34
・30s 40s 襤褸 針式シンチ フレンチワーク モールスキン パンツ W31
ほかの在庫はFRENCH WORK カテゴリ、Bottoms カテゴリに並んでいます。
